堕天の翼
「成宮くんが…、連れてかれちゃった…」

「…っえぇ…?」

「彼の…お姉さんに…っ!」

「…なに、それ…っ?」

瑞希は、瑠樺に支えられ…やっと、立ち上がることが出来た…

「とにかく、頬、冷やさないと…
頬、赤み引くかな?」

コトの詳細までは分からないようだが…、瑠樺は瑞希が奈都子に殴られたと知り…、涙が零れ落ちそうだった…

大学の構内を歩き…、校舎まで戻ろう…としていた…

「ねぇ、いまのって…1年の成宮くん? 誘拐かなんか…?」

その様子を見ていたのか…、傍観していたのか…、そう話しかけてきた女子学生…。。瑞希は、無視して通り過ぎた…

「……っ」
《あんな場面を目の当たりにして…、助けようともしないのに…っ!》

と、心の中で…悪態をつきそうになっていた…


が。。

「……」
《自分だって、見知らぬ人が目の前で連れていかれても…、何も出来ないかもしれない…

同じだ…。。

でも…。。》

と、瑞希は、その女子学生の横を通り過ぎた後…、彼女たちが手に持っていたスマホが気になり、足を止め…振り返る…

「…あの…っ」
《何かの…、望みが…あれば…っ》


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


先程の教室に戻ってきた瑞希…。。目の前には瑞希の、父親の恭一がいる…

恭一は、頭を抱えながら…、重苦しいため息をついた…

「なんなんだ…ソレは? 薬って、何の薬だっ? どうやって入手したんだ?
いくら…、身内だからって…」

やっと、重苦しい口を開いて…、瑞希に問いただした…。。瑞希は、奈都子に殴られた頬を濡れたタオルで冷やしながら…首を左右に振る…

恭一は、再び…ため息をついた…

「人を雇ってまで…っ。拉致監禁は、もう…犯罪じゃないか…」

恭一の言葉に、瑞希は何も言い返せない…。。恭一は、瑞希の頬に置かれた手を重ね…

「瑞希…、私は、大人の話し合いをさせて貰うよ…」

瑞希は、恭一の方を見上げる…。。恭一が何を言おうとしているのか…分からなかった…

「彼の…ご両親に会って、話をしよう…。その前に、準備が必要だな…」

その時、2人がいる教室の扉が開いた…

「瑞希ちゃん! 証拠、見つけた…っ!」

と、スマホを見せながら…入ってきた瑠樺…。。その後ろに話を聞きつけた雅人もいた…

瑠樺は、瑞希に証拠となりうるスマホの画像を見せる…

「さっきの人以外にも…、撮ってる人がいたの!
も、ネットに拡散されてる…!
誰が撮ってたのかは、分からないんどけど。。」

瑠樺は、雅人と共に…先程の女子学生以外にも悠が連れていかれる場面を見ていた学生たちに情報提供を頼んでいた…

その、瑠樺が見せたスマホには、意識を失った悠が数人の男たちに車に押し込まれる場面…、車から奈都子が降り…瑞希と口論し頬を殴られた場面…が、映っていた…


瑞希の後ろから、そのシーンを見ていた恭一の方を振り返り…

「これ、証拠になるよね? 私、コレでお姉さんに解放して貰えるように話す…」



「まぁ、物的証拠にはなるけど…。人を雇ったり、薬を使うなんてのは、常軌を逸してる…。お前が適う相手じゃない」

「じゃ、どうしたら…いいの?
このままじゃ…、成宮くん、殺される…! 身体は助かっても…、彼の心が殺される…
このまま…、放っておくことなんて出来ない…っ!」

恭一の言葉に、不安気な瑞希…。。恭一は、瑞希に笑いかけ…

「落ち着きなさい。まずは、薬をどうやって入手したのか…」

「成宮のお姉さん、学生の頃から通院してるって、言ってました…。成宮も連れてくコトあるって…
何の病気か…は、聞かされてないけど」

そぅ、瑠樺の後ろにいた雅人の言葉に…

「通院歴…か…、たぶん、そこだろうな…」

恭一は、不安気な表情を浮かべている瑞希の頭を撫でながら…

「大丈夫だから。」

その言葉に、瑞希は、ようやく頷き返した…
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