堕天の翼
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼

自宅アパートに、何とか…たどり着いた…瑞希…。。オートロックの部屋のドアを開ける…

今朝まで…、悠がここにいた…という余韻が残っていた…

彼が実家から持って来ていた荷物…や、本などが、そのままの状態で置かれていた…

瑞希は、彼の大学ノートを見つけた…パラパラと捲る…。。そこには…

眠りに落ちている瑞希を描いたモノが…、幾つもあった…。。確か、瑠樺が悠は絵を描くのが好きだと言っていた…

「綺麗な絵…いつの間に…っ」
《こんなに…っ? 》

その、幾つも描かれた鉛筆画に…、彼の自分への想いを知った…

涙が溢れだしそうになる…

瑞希は、ベッドの上に置かれた悠が着ていたシャツを抱きしめる…その場に、ペタン…と、崩れ落ちるかのように…腰を降ろした…

「…成宮くん…っ」

側にあったベッドにもたれ掛かり…、自然…に溢れ出した涙を止められない…

その、脳裏に…彼が最後に自分に笑いかけてくれていた…笑顔が思い浮かぶ…

あそこで、彼が抵抗すれば…危害は、瑞希にも及ぶ…という判断からだろう…彼は、薬を使われなくても、無抵抗で応じるつもりだった…

「…悠…っ」
《やっぱり…、成宮くんが好き…

どうにかして…、助け出せる方法はないの…っ?》


その時、鞄に入れていた携帯が鳴り響いた…。。瑠樺からの着信だった…

『あ、瑞希ちゃん! 明日、成宮くんのお母さんに会いに行かない? 何か、知ってるかもしれないしっ!』

と、電話に出るなり…、意気揚々とそう言っている瑠樺…

「彼のお母さん…?」
《もしかしたら、あのお姉さんとも会えるかも…!》

瑞希は、きゅっと唇を、かみ締め…、頬に伝う涙を拭い…

「行く!」


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


どれくらい…、眠り続けていたのか…?

目が醒めても…、意識はまだ朦朧としていた…

何か…、大事なことがあったはずなのに…、意識が朦朧として…考えることも出来ない…

身を捩らせ…、身体を動かそう…にも、適わない…

白いシーツの上…、ベッドの上にいるようだった…。。一糸まとわぬ姿…に、タオルケットだけ掛けられている…

あぁ、そうだ…。。あの時、捕まったんだ…と、やっと、その事を思い出していた…

携帯も、衣類も財布も…全て、奪い取られた…のだろう…


顔だけ…、上げると…身体の自由は利かない。。手を動かそうにも…両腕は後ろ手で縛られ…、足元は、足枷で繋がれていた…

これでは、逃げようにも…逃げられるはずがない…

「……っ」
《あの時…、

確か…、瑞希と一緒にいた…

漆原と、あの人に雇われた男たちに…


結局、逃げられないのか…

瑞希は…、彼女は、無事だろうか…?》

諦めかけ…、その場に倒れ込む…

瑞希の…、自分に向けてくれた笑顔だけが…瞼の裏に映る…

「……っ」
《もう…、2度と…会えないのかもしれない…

彼女には、もし…2度と会えなくなっても…。。幸せでいてくれれば…それでいい…

自分のことを…、忘れて…》

そぅ、半ば…諦めかけた時…。。すぐ近くで自分の様子を眺めていた人の気配に気がついた…

自分のことを見下ろす…その人物…。。その人物に視線を向ける…

「…漆原…っ」

短く…、その人物の名を呟いた…

琢磨は、横たわっている悠の側に腰を下ろし…

「お前って、ホント…馬鹿だよな…。
お前の、姉ちゃん…、手に負えないって知ってて…、なんで逃げようとするわけ?」

そぅ…、悠に優越感に浸っているかのような…不敵な笑みを浮かべている…

「……っ」

悠は、無表情に近い表情で、琢磨から視線を逸らす…

< 33 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop