堕天の翼
「何か、食べれそうか? お前、まる1日以上、眠り続けていたから…」

悠は、琢磨から背を向ける…無言のまま、再び…瞼を閉じた…

「あぁ、そっ! 要らないならいいゃ」

それでも、無視し続ける悠に、琢磨はため息をつき…側において置いたミネラルウォーターを口にする…

背を向ける悠の身体を引き寄せ、その唇を塞ぐ…、悠の喉元に流れ落ちる潤い…

「…っ何を…!」

「安心しろ。薬は入ってない…。お前に死なれたら…俺が困るから…」

そうだ…、琢磨は、姉の奈都子の言いなりになっていた…この状況の自分が死ぬことになったら…監視をしている自分にも危害が及ぶ…。。だからだろう…と。

「……っ」
《コイツ…、ホントに何を考えてるんだ…っ?

俺の事が、邪魔なはずなのに…》

悠は、再び…琢磨から背を向け…

「勝手にしろ…」

「じゃ、何か食べられそうなモノを持ってくる。」

そう、言いながら…琢磨は、その部屋のドアまで行く…

ベッドに横たわっている悠の方を振り返り…

「ハンスト起こそうとして…お前が死んだとして…お前が死を選んだとしても…、確実に哀しむ人間がいる…。それを忘れるなよ…」

そぅ、言い残し…部屋を出、琢磨はその部屋の鍵を締める音が聞こえた…

「……っ」
《…【哀しむ人間】…?

アイツ、何を…? そんな人間が…っ》

琢磨の言葉に、何かを思い出した…。。この状況で、いまの自分が生命が尽きることとなったら…

悠の脳裏に、愛しい人の笑顔が思い浮かんだ…

「…瑞希…っ」


✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


その翌日の朝…、琢磨は、悠にサンドイッチを持って来ていた…

後ろ手に縛られた拘束を解いてくれた…

ここまで長く…、縛られたのは初めてだった…。。悠は、両手首についた跡を摩る…

「あの人は…?」

悠は、自分の目の前で、サンドイッチを食べ始めている琢磨に視線を向ける…

「…あ? 姉ちゃん?
なんか…、お前を探すのに…探偵やらヤバい人間も雇って…ここも借りたから、お前の親父さんに呼ばれた…って、今朝からいない…
それとさ…、あの人がアテにしてた奴も【手を引く】って言い出したみたいで…機嫌悪い…」

その言葉に、悠は笑いが込み上げた…

自分をただ探すために…?

「…借りた…って、ここ、何処?」
《あの人が、精神科に通院するようになって…、義父さんもなにも言わなくなった…

本当に、精神的に鬱病なのかも…どうなのか…?》

「…教えるワケ、ないだろ?」

予想通り…の、琢磨の答えだった…

「まぁ、さすがに…ヤバめの人間を雇ったのは、不味かったよねー?
保証人になってくれた人、なんて言ったっけ? その人もアテにならなくなったし。」

と、他人事…でもあるかのような…言い方…

悠も、仕方なく…用意されたサンドイッチを食べ始める…。。琢磨に無理矢理、食べさせられるのだけは遠慮したかったからだ…

サンドイッチを食べ始めた悠に、琢磨は…

「そう言えば…、これ、ネットで拡散されてるんだけど…」

と、スマホのネットに拡散されている映像を、悠に見せる…

その場面は…、薬を盛られた自分が数人の男たちに連れていかれる場面…と。。

「……っ」

「これ、2日前だけど…。お前、誘拐されたってコトになってる。
この騒動…、さすがにお前の親父も黙ってられないってワケ! 会社にも影響あるし〜!
ネットで、この女は、誰?って騒ぎになってるし〜!」

その次に、連れていかれる自分を追いかけてきた瑞希が、姉の奈都子と対峙している場面…

「…瑞希…っ」

「瑞希ちゃんって、意外と…お前の姉ちゃんに負けてないのな…。穏やかで癒し系かと思ったら…意外と…気が強い…」


「……」
《自分に…、ここまで必死になってくれる人がいるとは…

思わなかった…》

先程より…、反応を示すようになった悠に…

「それで、お前はどうする…?」

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