堕天の翼
「あちゃ、怒ったかな?」

軽く舌を出した瑠樺に…、瑞希は再び深いため息をついた…半ば、呆れながら…

「もぅ! 瑠樺ちゃん、なんでいきなりあんな事…」

瑞希は、先程の瑠樺の発言に、恥ずかしさもあり…この場には居たくなかった…

「だって、お似合いだと思うから…」

「今日、初めて会ったんだよ?
それを、いきなり…っ」
《あんな事、言うだなんて…!》

「それにっ!
2人…付き合えば…、成宮くんの探してる絵のモデルにも瑞希ちゃん、なれるじゃない?」

瑞希の言葉を遮り…、悪びれる様子もなく…そう言った瑠樺…

「…モデルなんて、ムリだし!
そんなの、瑠樺ちゃんなればいいでしょ?」

「えっ? あたし、ムリっ!」

すぐに、そう言ってのけた瑠樺に、瑞希はまたも…呆れながら…

「自分でムリなのを…なんで人に…?」

「だって…、ハダカのモデルなんてムリでしょ?」

その瑠樺のあっけらかんな言葉に、瑞希は言葉を失いかけた…

「え? 絵のモデルって、ハダカなの?」

瑞希の問いかけに、瑠樺は何度も頷き返し…

「瑞希ちゃん、綺麗だから…ハダカでも絶対! 綺麗よ! あ、ハダカって言っても…背中?らしいけど…それでも、あたし、ムリだし〜!
でも…、芸術家気質って、ワケが分からないよね? 天使のような人を描きたいって…。成宮くん、高一の頃から言ってて…
それまでは、モデルなしで描いてたけど…上手くいかないみたいで。瑞希ちゃん、天使みたいだもの!
ても、進学した先は、経済学部よ?
美大…、反対でもされたのかな~?」

瑠樺の言葉に、瑞希はガックリと肩を落とした…

「それに、瑞希ちゃん、きっと成宮くんも瑞希ちゃんのこと、嫌いじゃないよ!
瑞希ちゃんもでしょ?」

そぅ、ニッコリと言ってのけた瑠樺…

瑠樺の言葉に、瑞希はようやく瑠樺の方に視線を向けた…

「そんなの、分からないじゃない…! 何を根拠に…」
《それに…、瑠樺ちゃんは彼のこと…

彼も、瑠樺ちゃんとあんなに親しそうなのに…》

何故、瑠樺が瑞希に悠のことを、ここまで勧めるのか疑問だった…

大学で会った時、瑠樺は悠のことが好きなのだと思っていた…

それは、違っていたのだろうか…?

「私、瑠樺ちゃんが成宮くんのことを好きなのだと…」

「えっ? あたし?」

少し…、動揺した瑠樺…

「あたしは、ムリだょ。振られてるから…」

そぅ、先程とは打って変わって…寂しげな表情を見せた瑠樺…

女性客の元に、注文を受けたケーキセットを運んでいく悠の姿に視線を向けている…

「高校生のとき、告ったけど…振られてるから…。【友達だ】って…。
だから、今でも…友達の関係は壊さないんだ…」

その瞬間に悟った…

瑠樺は、今でも…彼のことが好きなんだ…と…。。


でも、それは口に出来ない…


「……っ」
《彼のことは…

好きにはならない…


好きになっちゃ…、いけない…。。》


瑠樺が、好きな彼を…好きになることなど…、決して…


2人は、その喫茶店でオススメの本日のケーキセットを注文した…

「美味し~っ! やっぱ、オススメだけあるよね?」

と、運ばれてきたミルクレープを口にし、上機嫌になった瑠樺…

瑞希は、先程…、瑠樺が寂しげな表情をしていた時は、どうしようかと思ってしまっていた…

「うん、ホントだ…」
《よかった…》

笑顔になった瑠樺に、安心した…


「あ! そうだ。写真みる?」

と、何かを思い出したかのように…スマホを取り出した瑠樺…

スマホのギャラリーを瑞希に見せ…スライドさせる…

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