堕天の翼

薄暗い…部屋の灯りを付けた…。。シン…と静まり返った部屋…

つい…、先日までは、バイトから帰って来ても…悠が居てくれいた…。。悠がバイトの時は瑞希に…と、バイト先の喫茶店のケーキを持ってきてくれていた…

瑞希は、ペタン…と、床にそのまま腰を降ろした…

思い浮かぶのは…、悠の優しく笑いかける笑顔…

最初は、とっつきにくい感じの印象を与えた悠だったが…、打ち解けて行くうちに、次第に…そんな気持ちも消え失せていた…

心の中に、ポッカリと穴が空いているような…そんな感覚がした…

「……」
《成宮くんは、あのお姉さんに何をされていたんだろう…？

彼は、この3ヶ月の間のことを…話そうとはしない…


きっと、知られたくないことなんだ…

でも、私を巻き込まないために…、彼はお姉さんの元に戻った…》


瑞希は、きゅ…っと、両の瞼を閉じ…唇を噛み締めた…


歯がゆかった…、なんの力もない自分が…

瑞希は、先ほど…琢磨が来たことを、父の恭一に伝えよう…と、鞄からスマホを取り出した…

そこには、知らない番号から…メッセージが来ていた…

「…なんだろう…」

スマホのそのメッセージを見つめる…

【瑞希ちゃん、コレで少しは信用してくれる？ これ聴いたら、このメッセージは、消去してねー】

と、この文面…と、その内容…

先ほどの琢磨から…のメッセージだった。

数日前に、瑞希の目の前で奈都子によって拉致され悠…、琢磨は、悠が持っていた荷物やスマホから瑞希の連絡先を入手した…と、思えた。。

「……」
《一体…、あの人が何を考えているのか…？

言っていることを、信じてもいいのか…？ 分からない…っ》

そぅ…思いながら…、胸元の不安に押し潰されそうな…そんな感覚がしていた…

不安…がある反面、一縷…の希みがあるとすれば…、琢磨が持っている…と、言っていた証拠となりうる…【音声データ】…

その、添付されている音声データのファイル…

瑞希は、再生させ…スマホを、耳元に持っていく…


『それは、最初から…悠に襲われた…というのは、ウソだったってこと？』

耳元に、先ほどの…琢磨の声が聞こえてきた…

『…そうよ。あの子が高校1年の時、精神科の向精神薬を飲み物に混ぜて…、意識を失ったあの子に襲われたように…
最初の数回…は、薬を使って…昏睡状態の悠を抱き込んだのは私…。。犯された…と、言ったら…あとは、言いなりになってくれたゎ…』

『どうして？ そんな…』

『あの子が来てから…、私の居場所はなくなった…。父も…優秀なあの子を褒めてばかり…跡取りにするって…、血の繋がりのある…娘の私より…赤の他人のっ！
だから、あの子が言いなりになるなら…何でも良かった…』

そこで、途切れた…声…

「……っ」
《これ…っ！

漆原さんと、奈都子さんの会話…っ？》

2人が話していた会話の内容…に、瑞希は冷や汗が浮かび上がってくるような感覚がした…


コレがホンモノで、会話の内容が真実…だとしたら…

悠は、奈都子に薬を飲まされ…、無抵抗で…と、言うことになる…

「……っ」
《このデータ、証拠になる…？

薬を使った…と、ハッキリと言っている…》

と、思いながら…も、確信めいたモノは、何一つなかった…

「……っ」
《コレだけでは…、

いくらでも言い逃れは出来る…。。

でも、どうしたら…？》


瑞希は、ある人物に、連絡をしてみることにした…