堕天の翼
意識を、失う…寸前に聴こえた…悠が救急車を呼ぶ声…
救急車が到着する直前まで…傍にいた悠…、額からつたい落ちる自分の汗を拭い…腰部分の出血した箇所をシーツで押さえつけていた…
「…どうして…っ」
《逃げなかったんだ…?
逃げられるチャンスだったのに…、何故…?》
琢磨は、何故…悠が奈都子から逃げ出せる機会があったのにも関わらず…、何故、逃げなかったのか…理解出来なかった…。。自分のことなど…放っておけば良かったのに…と。。
琢磨は、重苦しいため息を1つついた…
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
翌日の朝…、早朝の病院に訪れていた瑞希や瑠樺たち…
昨夜は、一旦自宅に帰り…、意識を取り戻したと琢磨の母からの連絡を受け…また来院していたのだった…
「なに、お前ら…こんな早くから…っ!」
朝食時間前…の時間もあってか…、琢磨は頬をひきつらせながら言った…。。大学に行く前に、訪れていたようだ…
「琢磨、良かった…」
と、既に瞼が腫れている…瑠樺…は、すぐ様、琢磨のベッドの方に駆け寄る…。。すぐにパイプ椅子に座り、その顔をのぞき込む…
「大丈夫? もぅ、死ぬかと思った…」
その瑠樺の泣きじゃくる頬に触れながら…
「お前、泣きすぎ…」
そぅ、吹き出して見せた琢磨…
瑞希は、その2人の様子に何かの違和感を感じた…。。すぐ様、すぐ隣にいる雅人を見上げる…少し寂し気な表情をし、ため息をついている…
「……」
《あれ? もしかして…っ。
瑠樺が好きな人…って…?
それに、この佐伯くんの反応って…?》
琢磨は、病室のドア付近にいる…瑞希や雅人に気がついた…
「瑠樺、そこの鞄の中のボイスレコーダー、取って」
琢磨は、ベッド近くの床頭台の上にある鞄を指さした…。。瑠樺は言われるままに、その鞄の中を覗き込み…ボイスレコーダーを取り出す…
「これ…?」
瑠樺の問いに、頷き返した琢磨…。。瑞希の方に視線を向け…
「それ、瑞希ちゃんにあげる
あの姉さんとのやり取り…。去年の夏くらいからの…」
その琢磨の言葉に、瑞希は瑠樺からそのボイスレコーダーを受け取りながら…
「漆原さん…、まさか…証拠を…?」
《…この、証拠を手に入れる為に…っ?
今まで…っ?》
「高3の夏くらいだったか…、アイツとあの姉さんとの関係を知ったのは…、脅迫まがいな事をされている…それで、言いなりになっているんだ…と、気がついた。
あの女から抜け出す…のには、何かキッカケにがないとムリだと思った。
誰かが…、救い出さないと…あの女の呪縛から、逃れられない…と。。
だから…、2年がかりで信用を得て…
君に会って…、アイツは以前のように息を吹き返していた…
成宮を救えるのは、瑞希ちゃんだ…って…」
「…でも…! こんな危険なこと…」
琢磨の言葉に、声を荒らげる瑞希…、いつの間にか…涙が溢れだしそうだった…
声を荒らげた瑞希に、琢磨はやっと…笑いかけながらで…
「アイツら、【別荘に行く】…と、言っていた。場所は分からないけど…
成宮は、あの姉さんと一緒だ…
アイツ、助けられるの…瑞希ちゃんしかいないじゃん…
助けてやってくれない…?
あの姉さんと居るのも…、あの女が【捕まりたくない】と、言い出したからだ…アイツは何も悪くない…」
「…奈都子さんと居るのは、成宮くんの意思ですか…っ?」
瑞希の問いかけに、琢磨は無言を貫く…。。その無言の訴えに…【彼の意思で、奈都子さんといることを選んだ】…と。。
「アイツは、君のことが好きだよ…。逃げ回った所で、ただの時間稼ぎでしかない…」
確実に、瑞希が今まで知っている琢磨とは違う…。。彼は彼なりに…悠をあの状況から救い出そう…としていた…
たぶん、こちらが…彼の本当の姿なのだろう…と、瑞希は感じ取った…
救急車が到着する直前まで…傍にいた悠…、額からつたい落ちる自分の汗を拭い…腰部分の出血した箇所をシーツで押さえつけていた…
「…どうして…っ」
《逃げなかったんだ…?
逃げられるチャンスだったのに…、何故…?》
琢磨は、何故…悠が奈都子から逃げ出せる機会があったのにも関わらず…、何故、逃げなかったのか…理解出来なかった…。。自分のことなど…放っておけば良かったのに…と。。
琢磨は、重苦しいため息を1つついた…
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
翌日の朝…、早朝の病院に訪れていた瑞希や瑠樺たち…
昨夜は、一旦自宅に帰り…、意識を取り戻したと琢磨の母からの連絡を受け…また来院していたのだった…
「なに、お前ら…こんな早くから…っ!」
朝食時間前…の時間もあってか…、琢磨は頬をひきつらせながら言った…。。大学に行く前に、訪れていたようだ…
「琢磨、良かった…」
と、既に瞼が腫れている…瑠樺…は、すぐ様、琢磨のベッドの方に駆け寄る…。。すぐにパイプ椅子に座り、その顔をのぞき込む…
「大丈夫? もぅ、死ぬかと思った…」
その瑠樺の泣きじゃくる頬に触れながら…
「お前、泣きすぎ…」
そぅ、吹き出して見せた琢磨…
瑞希は、その2人の様子に何かの違和感を感じた…。。すぐ様、すぐ隣にいる雅人を見上げる…少し寂し気な表情をし、ため息をついている…
「……」
《あれ? もしかして…っ。
瑠樺が好きな人…って…?
それに、この佐伯くんの反応って…?》
琢磨は、病室のドア付近にいる…瑞希や雅人に気がついた…
「瑠樺、そこの鞄の中のボイスレコーダー、取って」
琢磨は、ベッド近くの床頭台の上にある鞄を指さした…。。瑠樺は言われるままに、その鞄の中を覗き込み…ボイスレコーダーを取り出す…
「これ…?」
瑠樺の問いに、頷き返した琢磨…。。瑞希の方に視線を向け…
「それ、瑞希ちゃんにあげる
あの姉さんとのやり取り…。去年の夏くらいからの…」
その琢磨の言葉に、瑞希は瑠樺からそのボイスレコーダーを受け取りながら…
「漆原さん…、まさか…証拠を…?」
《…この、証拠を手に入れる為に…っ?
今まで…っ?》
「高3の夏くらいだったか…、アイツとあの姉さんとの関係を知ったのは…、脅迫まがいな事をされている…それで、言いなりになっているんだ…と、気がついた。
あの女から抜け出す…のには、何かキッカケにがないとムリだと思った。
誰かが…、救い出さないと…あの女の呪縛から、逃れられない…と。。
だから…、2年がかりで信用を得て…
君に会って…、アイツは以前のように息を吹き返していた…
成宮を救えるのは、瑞希ちゃんだ…って…」
「…でも…! こんな危険なこと…」
琢磨の言葉に、声を荒らげる瑞希…、いつの間にか…涙が溢れだしそうだった…
声を荒らげた瑞希に、琢磨はやっと…笑いかけながらで…
「アイツら、【別荘に行く】…と、言っていた。場所は分からないけど…
成宮は、あの姉さんと一緒だ…
アイツ、助けられるの…瑞希ちゃんしかいないじゃん…
助けてやってくれない…?
あの姉さんと居るのも…、あの女が【捕まりたくない】と、言い出したからだ…アイツは何も悪くない…」
「…奈都子さんと居るのは、成宮くんの意思ですか…っ?」
瑞希の問いかけに、琢磨は無言を貫く…。。その無言の訴えに…【彼の意思で、奈都子さんといることを選んだ】…と。。
「アイツは、君のことが好きだよ…。逃げ回った所で、ただの時間稼ぎでしかない…」
確実に、瑞希が今まで知っている琢磨とは違う…。。彼は彼なりに…悠をあの状況から救い出そう…としていた…
たぶん、こちらが…彼の本当の姿なのだろう…と、瑞希は感じ取った…