堕天の翼
そぅ、冷たく…突き放すような言葉に、2人は何も言い返せない…

「漆原くん、彼の話によると…、息子さん達は別荘に向かっているだろう…との話しです。
場所を教えてください。警察が居場所を突き止める前に、向かいます」

恭一の言葉に、互いの顔を見合わせる2人…。。渋々…頷いてみせた奈都子の父親…、美津子は、腰を上げ…成宮家の別荘の住所を手渡した…

「お願いします。私たちは、警察や会社の対応に…」

頭を下げた奈都子の父親…。。そこで、やっと…恭一は、穏やかに笑いかけながら…

「お嬢さん、これから先も…未来があります。ご両親で守ってやってください」

そぅ、笑いかけながら言った…


悠の自宅を出た瑞希と恭一…、恭一は重苦しいため息をつきながら…、ネクタイを緩める…

「あー、緊張した!」

と、口を着いた言葉に、瑞希はプっと吹き出し…

「お父さん、かっこよかったー!」

瑞希は、恭一の腕に手を絡ませる…。。その腕に自分の頬を擦り寄せる…

そんな娘の反応に…

「当たり前でしょ! やる時はやります…」

「ねぇ、なんでお母さんと別れたの?」

と、素朴な疑問を急にぶつけてきた瑞希…、その質問に恭一は頬をひきつらせ…

「君のお母さんの方が、俺よりも何倍も! かっこいいし、強いからね?」

そぅ、苦笑いしながら…答えた。。

「さて、支度して…向かうか〜! 箱根か! いまから、向かえば…夜には着くかな?」

恭一は、先ほど…悠の母・美津子から貰った成宮家の別荘のある住所を見つめながら言った…

「早くしないと…、また、どっか行きそうだからね?」
《彼と、そのお姉さん…

2人だけになっている…【いま】が最も危険だ…

何も無ければ…、良いのだけど…っ

2人の行く末は、真っ暗な路しかない…と、言うのに…。。》

恭一は、安心したように…笑ってみせる瑞希に視線を向ける…。。恭一はその笑顔とは逆に、不安な予感が脳裏を駆け巡っていた…

「……っ」
《もし、仮に…

最悪な事態になっていたとしても…、瑞希の精神が保っていられるか…どうか…?》

自分を見つめる恭一に、瑞希は、軽く…首を傾げ…

「どうかしたの? お父さん…」

「いゃ、大丈夫。急ごう…」

その恭一の言葉に、瑞希は頷き返した…



✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼


箱根…の、成宮家の別荘に来ていた…

昨夜は、都内のホテルで一泊し、レンタカーを借り…、訪れていた…お昼前には、その別荘に着いていた…

来るのは、悠が高校2年の時以来…だ。。

別荘の、管理をしている管理人の初老の男性から鍵を貰い…、少し湿気も篭もっていたため、悠は窓を開け放つ…

悠は、ダイニングルームの椅子に座り…、両足を抱き抱え…、小さく震えている奈都子の方を振り返る…

昨夜から…、奈都子はずっと、この調子だ…。。小さな子どものように、涙を溜めた瞳で…カタカタと震えている…

悠は、深いため息を1つ…つき…。。奈都子の側まで行き…、その瞳に視線を合わせる…

「姉さん…、大丈夫?」

両足を抱き抱えている…その手に、自分の手を重ねる…。。その温もりに、奈都子はやっと焦点が定まった…

「…ゆ…、ゆ…たか…。どうしょ…、私…、人を殺したの…?」

昨夜、琢磨を刺してしまったことを言っているのだろう…。。

奈都子は、アレから…錯乱気味な状態になることごあった…

「大丈夫。ちゃんと、病院に行ってる…。亡くなったりしてないから…」
《姉さんが、漆原を刺したこと…

それほど、大きなニュースにもなっていない…。

誤って、ナイフを刺した男性が、救急車で運ばれた…としか…。。たぶん、そのニュースは漆原のことだろうが…

が、それも時間の問題だ…っ!》

悠は、奈都子の身体を抱き締めた…

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