堕天の翼
第9章 ‐未 来‐
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悠の自宅から、すぐに支度をし…瑞希たちは、その日の夕方には、恭一の車で、箱根に向かう瑞希と瑠樺…雅人たち…

「箱根って、久々〜!
温泉、入りたいな~!」

と、旅行気分が抜けきれない瑠樺…。。

し…んと。静まり返っている車内を盛り上げようとする…彼女の配慮らしいが…、瑞希はそんな瑠樺の様子に…苦笑いを浮かべる…

「瑞希ちゃん! 大丈夫ょ、ね!」

不安気な瑞希の様子に、瑠樺は親指を立たせてみせる…。。彼女の明るさ…は、いまのこの状況にとって、救いでもあった…

瑠樺の言葉に、頷き返した瑞希…

「……っ」
《成宮くん、無事でいて…!

それだけで…、何も…望まないから…

どうか…》

瑞希は、膝の上に置いた手を、ぎゅ…っと握りしめた…

ただ、彼の無事を願うばかり…だった…


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「…美味っ!」

思わず…、発せられた言葉に、奈都子は慌てて口を噤む…

その反応に、悠は思わず…吹き出し、笑った…

「姉さんが何もしなさすぎなんだよ。カレーくらい、俺でも出来るよ」

その日の昼食は、悠が近くのスーパーで購入してきた材料で、カレーを作っていた…

その、言葉に…奈都子は肩をすくめる…

「私、なにも出来ないのね。料理もしたことないもの…
あなたは、何でも器用にこなせるから…私より、人付き合いも…頭だっていいし、スポーツも…」

奈都子の言葉に、悠は複雑だった…。。それは、全て…成宮の家の子どもになる為に、人一倍、努力して身につけてきたモノだったから…

「最初から…、何でも出来る人間なんていないよ…。みんな、自分なりに努力したり、葛藤や逆境があって…大人になってくんだから…
何もない人は、いないんじゃない…?」

そぅ…、カレーを口にしながら…言った悠の言葉に、奈都子は、じ…っと悠の方を見つめる…

その、奈都子の視線に、悠のスプーンを持っていた手が止まる…

「なに?」

「…いゃ、オトナだな…って。あんな子どもっぽかった男の子が、こんなこと、言うなんて…」

驚きに満ちた瞳を向ける奈都子に…、悠は何も言い返せない…。。やや間が空き、奈都子から視線を逸らし…。。再び、カレーを食べ始める…

「そりゃ、そうだよ…」

やはり…、このまま、この時間を過ごす…のには、限界がある…

いつまでも、2人でこうしているのにも…

それならば、やはり…逃げる…以外の路もあるのではないか?…と、思えてならない…

それが、姉の奈都子が言う…【一緒に死ぬ】ことなのか…、悠にも分からなかった…

しかし…、いまの自分には…奈都子と一緒に死ぬ…なんてこと、考えたくなかった…。。が、そこまで必要とし、求められているのであれば…それも、仕方ない…と、その瞳は空をさ迷っていた…

「……っ」
《瑞希も…、漆原が姉さんに刺されたことを…

知っている…のだろうか…?


漆原は、瑞希のことが好きなのか…?

彼女は、アイツと共に生きた方が幸せ…なのかもしれない…。。


この3ヶ月の間…
俺は、何人もの人間と関係を持った…

そんな男が、彼女を幸せに出来るはずもない…


それは、最初から分かっていた…


分かっていたはずなのに…っ》


そんな…、悠の何も映さない瞳…、奈都子も気づいていた…

が、自分と共に逃げてくれた悠の手を…離すことは出来ない…。。離したくはなかった…

その手を、離したら…自分には、生きる術を全て失ってしまいかねなかった…





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