堕天の翼
「悠、私、疲れたから…少し、休みたい」

そぅ、悠が作ったカレーを半分ほど食べ…、椅子から立ち上がった奈都子…

「あ、うん」

奈都子は、2階へと続く階段を上がり…、別荘にいる時に使用している部屋へと向かって行った…

その様子を見送りながら…、悠は深いため息をついた…

奈都子から取り戻したスマホの電源を入れる…。。起動後、すぐにたくさんの着信履歴…と、メールやLINE…

着信履歴は、主に…雅人や瑠樺…、他の同じ大学の友人たちから…。。大学構内で悠が拉致されたことを知っている瑞希からの履歴はなかった…。。悠のスマホを没収されるであろう…と、思ったからだろうか…?

メールやLINEも、似たようなモノだった…


「……っ」
《漆原は、無事だろうか…?

まさか…、アイツが俺を助け出すタイミングを見計らっていたなんて…

何故…?》

そぅ…、いくら考えても…答えなんて出るはずもない…。。姉の奈都子との関係を知った後から、琢磨は手のひらを返すように…自分の弱みを握っている…かのような対応をしてきていた…

それらが全て…、この時のため…だったのか…?…悠は、再び…ため息をついた…

「……っ」
《瑞希は、漆原が怪我をしたことを知っているのだろうか…?

彼女は、優しいから…、アイツのことを気遣ってくれるだろう…

漆原が、本当に瑞希のことを好きなのなら…っ

アイツと共に、生きた方がいい…》

そぅ…、一瞬…思い浮かんだ…想いと、瑞希の笑顔…

そぅ、思いながらも…納得しきれていない自分がいることに気がついていた…


【もぅ、何処にも行かないでね】…と、初めて、結ばれた夜に…、瑞希が言っていた…

どうして…、彼女の手を…離してしまったのか…?


どうして、自分は、嫌悪していたはずの姉を…助け。。その姉と…ここまで逃げてきているのか…?

自分でさぇも…、分からなかった…

「……っ」
《あの人と…、

生きていくことなんて…、

今までのことが続いていく…だけなのに…っ


それならば…、いっそ…

あの人の言うように…、一緒に死んだ方がラクなのだろうか…?》


悠は、ネットのニュース画面を見つめる…

琢磨のことについては、【誤って、殺傷した】としか…記載されていない…

が、だからと言って…。。警察が動いていない…とは、言いきれない。。

実の母親の美津子や義理の父からの連絡も一切ないのが…可笑しいくらいだ…



奈都子は、階段を上がり…、自分の部屋に向かう途中…、踵を返し…。。階下のダイニングルームのソファで、スマホを見つめている悠のことを覗き見ていた…

「……っ」

少し…、寂し気な表情…

奈都子は、手に持っていたスマホの電源を入れる…いくつか…の着信履歴…

そのまま、自室に行き、奈都子はある所に電話を掛けた…

話をし、その通話を切る…

「……っ」
《あの子は…、

私と一緒に、生きられない…》


自分は、いつ…以前のようになってしまうか…、分からない…



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