【短完】奇跡が降るなら、時の音を止めたいと思った。
開いた先にはやはりいつもと変わらずに普通の手があった。
驚きで初羅を見上げれば、諦めたような表情をした初羅が私を見る。
「これ、買ってくるね」
『いや、でも…』
「プレゼントさせてよ、さいご、なんだからさ。」
悲しそうに笑ってやんわりと私の手を離した初羅に何も言えなくて、初羅はレジへと歩き出した。
数分後に戻ってきて、
「はい、これ」
なんて言って店の外でネックレスを付けてくれる。
『ありがと……、』
初羅と続きを言おうとしたら今度は、初羅の首が透ける。
『…えっ、』
それも徐々に透けていたところが戻る。
「時間が無いから。
ひぃ、全部話すよ。今日ひぃを呼び出したのもこの為。
ねぇ、俺の話聞いてくれない?」
私を呼び出した理由?それがとても気になって。
今度は初羅の足首が透け始めたのが気になって、首をコクリ、と縦に動かした。
「ありがとう、ひぃ。」
笑った初羅は、きっとこの世界にいる誰よりも綺麗で誰よりも、儚かった。