~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
夏海は、いつものように颯太にLINEした。


《颯太、おはよう》


《おはよう夏海、良いお天気だね。今日も母さんと、病院に行ってくるよ》


《はい、行ってらっしゃい。気をつけてね》


そういえば、颯太も玉山市だっけ。ここ水崎市からは、車で小一時間はかかる。
その玉山市と水崎市の境に、小高い丘がある。正確に言うと、水崎市緑地公園と言う。
そこは見晴らしが良く、夜景が綺麗に見えて、恋人達のデートスポットになっていた。

夕暮れになると、小高い丘の一面に夕日が真っ赤に染まる。

町の人は、くれないの丘と呼んだ。
夏海は久し振りに、車で出かけることにした。
夏海も結婚前に行ったし、子供が生まれてからは、日中良く遊びに行った。

窓を開け、風を切って走る。
爽快感に体中が幸せを感じた。

久し振りに来たくれないの丘は、相変わらず子供達の遊ぶ声がして、見晴らしも良く憩いの場所だった。

一人ベンチで佇んでいた。
ここから水崎市が、一望できる。
夏海はカメラを持って、水崎の街を撮った。
楽しい…。
颯太からLINEがきた。


《ただいまー。夏海は今、何してるの?》


《くれないの丘にいるの。知ってる?》


《ああ、もちろん知ってるとも。僕も良く行くんだ。カメラ持ってね》


《私も丘から街を撮ったわ》


《ほんと?いいなー、これから僕も行こうかな》


《え?今?》


夏海は慌てた。


《夏海はまだいる?バイクだと、僕の所から30分くらいだよ。ふもとにコーヒー屋があるでしょ?僕はいつも、そこで休むんだ。あ…、でも夏海は会いたくないかな?僕は、どっちでも良いよ。夏海の気持ちに、合わせるから》


夏海は返事に困った。


《あはは、変かな。夏海は人妻だしね。無理しなくても良いよ。でも、僕の顔、ブログで見て知ってるでしょ?僕は夏海の顔知らないし、黙って通り過ぎても、わからないよ。笑》


夏海は、胸を押さえた。ドキドキしている。私10歳もサバ読んでるし、会うつもりもなかったし、有り得ないと思っている。

夏海は車に戻った。まだドキドキしている。

早くここから帰ろう…。








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