~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
夏海は、連絡を控えた。颯太は初めての場所で、慣れない仕事をしている。疲れきって、自分の事で精一杯に違いなかった。

夕方、聡と匠が帰って来た。


「母さん、ケーキ買ってきたからね」

ケーキの箱を、聡が差し出した。

「母さん、夕食の仕度まだだろ。俺達さ、二人のバイト代で母さんに夕食ご馳走するからさ」

得意気に匠が言った。

「ほんと?嬉しいわ、でも大丈夫?」

「じゃあ、この間できたイタリアンの店はどう?」

聡が誘った。

「良いけど、お父さん抜きにしたら可哀相でしょ?」

「良いじゃない、父さんの時にまた連れて行ってあげるよ。」

匠が言った。


「二人共、ありがとう。じゃあ喜んで。」



夏海は、子供達と夕食を食べに出かけた。
最近出来たイタリアンのお店。
オレンジ色の屋根に、白い壁の洒落た感じの店で、木の看板にはジラソーレと書いてあった。

夏海は、店を入る時に気が付いた。壁に飾った写真…何処かでみたような?
夏の向日葵が、群を成して、咲いている。
颯太の写真に似てる、インスタで見た、颯太の向日葵!夏海は暫く、写真を見つめていた。


「あ、この写真すごくいいね」

匠が、言った。聡も続いて見た。

「へえ!綺麗じゃない」


「そ、そうね綺麗ね」


夏海達はイタリアンを堪能した。

「美味しかったね、二人ともありがとう」

匠と聡は顔を見合わせて笑った。


その夜夏海は颯太にLINEした。


《颯太、お疲れ様。仕事はどう?》

《うん、仕事はまだ慣れないからね、手間取る事が多いよ》


《そう、疲れたでしょ?》


《昼間休んでたから平気さ。夏海は、相変わらずかい?》

《うん、今日ね、私の誕生日だったの。息子達が近所にできたイタリアンの店でお祝いしてくれたの。》


《へえ、いいね、イタリアンか。》

《あのね、そこで颯太のインスタにのってた向日葵の写真にそっくりなものが飾ってあったの、あの向日葵の》

《僕の写真?そういえば、兄さんの知り合いで、お店に飾るからって作ってあげたものかもしれない。お店の名前は?》


《ジラソーレって書いてあったわ》

《え?聞いてびっくり!そうその名前!夏海の近所だなんて》

夏海も驚いた。まさかその店が颯太に繋がりがあるなんて‥。
嬉しかった。そこに行けばいつでも、颯太の向日葵がある。




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