~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
次の日は、昼過ぎまで店で働き、午後病院へ行く日だった。


「マスター、勝手言ってすみませんが、これで上ります」


「ああ、気をつけて行ってらっしゃい」


夏海が外に出ると、匠が車で来ていた。


「母さん、僕は今日あいてるから、一緒に行くよ」

「助かったわ。母さん、もうクタクタ。今日お客さん多くて。」


そう言いながら、車に乗り込んだ。玉山市の大学病院は、三ヵ月しかいられないらしい。後は、水崎市の病院を、探すことになる。

病室は、涼しかった。

「父さん、調子はどう?」


匠は、康介の顔を覗き込んだ。


「あなた、今日は匠もいるから、お散歩しましょうね」


体の利かない康介を、車椅子に乗せるのは、大変な事だった。
久し振りに車椅子を押し、病院の中庭を散歩した。


「匠君」

後から、匠を呼ぶ声がした。

二人が振り向くと、茶髪でミニスカートの、女の子が立っていた。


「あ、美緒さん。今日来てたの?」

「匠、この方は?」


「ほら、スーパーの店長の娘さんが、入院しているの話しただろ?その娘さんの、お母さんの友人だよ。仲良しだから、ちょくちょくお見舞いに来るんだって。僕もこの間、プレゼント届ける時に会ったんだ」


「始めまして、匠の母です。お子さんいるとお見舞いも大変でしょう?」

「いいえ、あの子も、会えるの楽しみだし…、匠君、お父さんお大事に」


「ありがとう。美緒さん、真優ちゃんは?」


「ああ、まだ病室なの。颯ちゃんと一緒だから。」


「そうか、まだ此所にいる…?」


匠は美緒と、楽しそうに話し始めた。
夏海は、耳を疑った?颯ちゃん?でも、同じ名前なんて、たくさんあるし…。


「母さん、あまり長いと父さん疲れるから、病室戻ろうか。」


匠の声に、はっと、我に帰った。

「そうね、戻りましょ。」



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