~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
病室へ戻ると、康介を休ませた。


「母さん、僕ちょっと、スーパーの娘さんの所へ顔出すから。」


そう言うと匠は、じゃあ父さん又来る、と言って出て行った。
夏海も、寝てしまった康介を起こさないように、外へ出た。

病院の中庭で、ベンチに座った。良いお天気…。

子供の笑い声がして目をやると、匠と美緒とその子供の真優が、楽しそうに歩いて来た。

「母さん、ここにいたの?」


「ええ、父さん寝てしまったし。ちょっと疲れたの。」


その時、後から美緒を呼ぶ声がした。
夏海は、顔を上げるとびっくりした。
颯太だった。


「あ、颯ちゃん、さっきはありがとう。真優に付き合ってくれて。」


「ううん、美緒、いいんだよ。僕は子供好きだから。」


颯太と夏海は、目が合った。
夏海は、体が熱くなるのを感じた。

「あれ?あなたは昨日の…。僕、森山颯太です。」


「あ…、昨日の…。どうも、栗林です。」


「なんだ、母さん知ってるの?」


匠が言った。


「ええ、昨日お店に来たのよ。」


「なんだ、そうか。颯太君と美緒さんは、公園仲間なんだ。」


「公園仲間?」


夏海が、不思議そうな顔をすると、匠が続けた。


「僕達、ブログで知り合ったんだ。美緒は子供と公園で遊ぶし、僕と颯太はバイク繋がりなの。笑。」


「そうだったの。楽しそうね。」


夏海はまだ、事情がよく飲み込めなかった。


「母さん、スーパーの店長の娘さんは、今日退院するんだ。僕、ちょっと手伝ってくるよ。」


匠は、美緒と真優を連れて、行ってしまった。


「あの…栗林さん、隣りに座ってもいいですか?」


唐突に、颯太が言った。

夏海は言葉もなく、こっくりと頷いた。

二人は、暫くそのまま座っていた。

颯太は、夏海のほうを向いた。


「夏海。」


夏海はドキッとして、顔色が変わった。


「夏海…でしょ?」



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