~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
くれないの丘は、満天の星空だった。


「颯ちゃん、星空が綺麗ね。」


「うん、夏海、街の灯も綺麗だね。」

「私、今颯太とこうしている時が、幸せだわ。」


その時、夏海のケータイが鳴った。聡だった。


「母さん、早く帰って…今、病院から連絡があって、父さんが急に…」

後は、言葉にならなかった。


「聡、どうしたの?聡、今すぐ帰るから。」


夏海は、そう言うと、颯太も、慌ただしくエンジンをかけた。


「颯ちゃん、急いで。」


二人は、アパートへ戻った。聡が、玄関で待っていた。


「母さん、父さんが急変したって、今病院から連絡があったんだ。」


「わかったわ、すぐ病院へ向いましょう。」


「夏海、危ないから僕が運転する。聡君も後へ乗って。」


「はい、でもあなたは?」


そう言いながら、聡は、車に乗り込んだ。夏海も、聡の隣に乗った。
颯太が、口を開いた。


「聡君、僕は匠君の友達なんだ。」

「匠の?そうなの。さっき匠にも連絡したからね。」

匠も、驚いてすぐ病院へ向った。
間に合わなかった。
康介の顔は安らかだった。

夏海は、力が抜けたようにしゃがみ込んだ。
信じられない事がおこった。そう思った。
聡と匠は、夏海に駆け寄った。

夏海たちが暮らした、家とともに康介も旅立った。
 

それからしばらくして
聡が聞いた。


「母さん、俺ずっと気になる事があってさ。」


「どうしたの?」

「父さんが亡くなる時に、母さん、店に挨拶に行ったろ?俺が電話して待ってたら、バイクで帰って来てびっくりしたんだ。あいつは匠の友達だろ?たまたま店にいたの?」

夏海は、返事につまった。


「聡、母さんね…色々、相談していたの…話を聞いてもらって…すごく助かったわ。」


「母さん、いいんだ。俺わかってるよ。母さんが幸せで暮らせるなら、言う事はないよ。プラトニックじゃなくても。笑。」

夏海は、聡の以外な返事に戸惑った。


「聡ったら…。」

「今、母さんは自由だし…。」


「聡… 。」


夏海達が平穏な暮らしに戻るには、少しだけ、時間がかかった。
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