~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
夏海は、次の日から仕事を探した。何の取り柄もない自分が、情けなくなる。
もう、クリスマスも過ぎようとしていた。


「ただいま。」


聡が、バイトから戻った。


「母さん、ほら、コンビニで残ったクリスマスケーキさ。」


聡は、箱を開くとケーキをだした。

「わあ!美味しそう。ありがとう。」


「母さんには、苦労掛けてばかりで、俺、すごい感謝してんの。」


聡が微笑んで言った。
夏海は、言葉にならなかった。涙が溢れてとまらなかった。


「泣くなよ、母さん。俺、母さんに泣かれると弱いから。」


聡は、ケーキを取り分けた。


「母さん、ケーキ。」


「うんありがとう聡、美味しい。」

「仕事見つからないの?俺が行ってるコンビニでどう?俺、話するから。」


「聡、そんなつもりは…聡は嫌でしょ?」


「別に、俺は主に夜が多いし、母さんは昼間やれば?それに母さん綺麗だから、俺も鼻高いし、売上も上がるよ。笑。」


「もう、聡ったら…笑。」


「母さん、やっと笑ったね…。最近笑わないもの。そう言いえば、あいつと連絡してないんだろ?ずっとケータイの電源切ってさ、俺も母さんに連絡するの、困るし。」


夏美は顔を曇らせた。


「母さんは、確かに自由かもしれない。聡にも、わかってもらっていて…母さんは幸せだわ。でも、仕事もなく、僅かな蓄えしかない暮らしで、颯太に甘える訳にはいかない。」

「母さん…。」


夏海は、聡にそれ以上言えなかった。今の自分は、颯太に愛される自信がない。
自信というより、資格がないんだと、夏海は自分を責めた。

夏海は、聡のバイトするコンビニでパートをする事になった。毎日が仕事に慣れるので精一杯だった。


「母さん、仕事してるんだし、連絡出来ないからさ、いい加減ケータイ、電源入れてよ。」


「わかったわ。」

夜になって、夏海はケータイの電源を入れた。
颯太からのメールが、何通か届いた。


《夏海、どうしたの?何かあった?返事してくれ…》
《夏海…、僕は仕事が手につかない…。》


《夏海…、父さんが亡くなった。僕は山を降りる。》
もう、年が明けようとしていた。



< 38 / 65 >

この作品をシェア

pagetop