~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
夏海はソファに座りなおすと、スマホを開いた。

もう康介は、ここへはこない。お風呂から出ると、いつもそのまま寝てしまう。


《ひまわりさん、メールありがとう。同じ名前でびっくりしたけど、よろしく。》


夏海は、返事を読みながら、頬がゆるむのを感じ、ちょっと後ろめたい気がした。

《こちらこそ、よろしくね。何のお仕事してるの?》

《僕は今、働いてないよ。正確に言うと、季節労働者かな?笑》


《季節労働者?工事現場とか?》


《うーん、ちょっと違うよ。夏はペンションだったり、冬になったら、スキー場で働いたり、そんな感じ。それ以外は、カメラ持ってバイク走らせて放浪してるのさ。フーテンのとら、みたいでしょ?》


へぇ、面白い子。夏海は、彼に興味を持った。

その時だった。


「ただいまー」

ガチャッとドアの開く音がして、聡が顔をだした。


《私もカメラ好き。学生時代は写真部だったの。》


夏海はメールの返事をして、スマホを閉じた。


「何か食い物ある?腹減ったよ」

聡は、夏海の顔を見るとそう言った。

「あら、バイト先で食べて来なかったの?」


「ああ、今日は早く上ったからね」


聡は冷蔵庫を開けると、夕食の残りを出して食べ始めた。


「ねえ聡、ちゃんと授業に出ているんでしょうね」

「なんだよ、いきなり。大丈夫さ、ちゃんと卒業だけはできる」


「匠はどうなの?」


「知らないよ。そんなの、匠に聞けよ」


「あなたたち、同じ 学部じゃないの」


「同じ学部だって、単位取るの人それぞれだろ。俺達双子で、大学も同じだからってさ、それは別なの」

「とにかく、匠にもよく言って頂戴。私はもう寝るから、ちゃんと食べた後片付けるのよ」


聡は、たたみかけるように言われて、面白くなかった。
双子だって、いつも同じ事してる訳じゃないの、母さんだってわかってるくせに。

ブツブツ言ってる聡を背に、夏海は寝室に入った。



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