~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
(旅立ち)
あの夜から、颯太とは会っていなかった。
夏海は、毎日変わらずコンビニで働いた。
聡は大学を辞めて、バイトだけの毎日だった。


「母さん、俺今日さ、大学のみんなが送別会してくれるんだ。皆、礼文に帰ったら、休みに遊びに来るってさ。俺、民宿のおやじってのもいいかも。笑。」


聡はそう言って笑った。でも、夏海は知っている。皆と別れるのは、辛いに決まってる。

「聡、じゃあ母さん、匠のところへ行ってくる。」

「ああ、ここを発つ日には、見送りにくるってさ。メールきてた。」


夏海は、匠のアパートを訪ねた。

「匠、相変わらず仲が良いのね。」

匠と美緒は、とても幸せそうだった。


「母さん、あなたたちには、何も言う事はないわ。」

夏海は、目頭が熱くなった。


「母さんが聡と礼文に帰ったら、お金貯めて、美緒と遊びに行くよ。美緒にも、礼文の海見せてやりたいし。」


「匠、また発つ前に連絡するね。」

「うん、母さん…。それからさ…、颯太、昨日来たんだ。俺、母さんと颯太の事初めて聞いて、びっくりしたよ。あのさ…、あいつもう、連絡してないって言ったけど…、就職したんだよ。でも、とてもやつれて見えた。会って話くらいしたら?」


夏海は、匠のほうを見ると、少し微笑んだ。匠は、困ったような顔をした。


「美緒さんと仲良くね。」


夏海は、そう言うと、帰って行った。


颯太、就職したのね…良かった。


これでもう、水崎の街とも、玉山の街とも、お別れね。


それから…、


颯ちゃんとも…、

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