~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
控え室にはテーブルと椅子が置かれ、半分は畳があって、休めるようになっていた。
夏海と颯太の兄は、向いあって座った。


「夏海さん、食べましょう。どうぞ。」


颯太の兄が、おにぎりとペットボトルのお茶を、手渡した。


「ありがとうございます。」


夏海は受け取ると、颯太の兄のほうを見た。
颯太の兄は、暫く考えていたが、夏海の顔を見て言った。


「こんな時に聞くのも、失礼かと思ったのですが…。颯太とは、どういう関係なんですか?」


夏海は、暫く黙っていた。でも、話さない訳にはいかなかった。


「私と颯ちゃんは、水崎にいた頃に知り合ったんです。私は、色々あって、颯ちゃんに相談していたんです。水崎では生活して行けなくなって、実家のある礼文に帰って来ました。そしたら…、颯ちゃん…。」


「颯太が、あなたを追って来たっていうんですか?」

「いいえ、休みになったら礼文に遊びに来るといってたんです。でも、まさかあの日に、会社を辞めたなんて…。」


「あの日って?あの日ってどういう事です?あなたと颯太は…。」


夏海は、何も言えなかった。私達は愛し合っていた。そう、言いたかった。


颯太の兄は、それ以上何も言わなかった。


その時看護士が入ってきた。

「森山さん、颯太さんは普通の病室へ移ります。付き添う時は、簡易ベッドを出しますよ。」


そう言って出て行った。
二人は看護士の後に続いて、病室へ向かった。

颯太は普通の病室へ移ったが、まだ目を覚まさない。夏美は、颯太の手をそっと握った。
颯太の兄が、言った。

「夏海さん、颯太についてやって下さい。私は、控え室で休みます。明日は帰らなければならないし、会社に休みを取ってまた戻ってきます。こいつもそのほうが喜ぶでしょう。」


そう言うと、病室を出て行った。夏海は、颯太のベッドの隣りに置いてある簡易ベッドに横たわった。
颯ちゃん、私達はやっと会う事ができたね。そう思いながら颯太の寝顔を見ていたが、やがて深い眠りに落ちた。



< 55 / 65 >

この作品をシェア

pagetop