~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
(礼文島から愛を込めて)
夏海は結局、その日は礼文へ帰れなかった。
夜、聡から連絡が来た。


「どうしたの母さん、俺、母さんが帰って来るの待ってたんだ…。」


「聡、ごめんなさい。帰る直前に、颯ちゃんが目を覚まして…。ちょっとバタバタして帰りそびれてしまって。」


「あ、意識が戻ったの?それは良かった。母さん、良かったね。颯太のお兄さんは?」


「会社にお休みを貰ってくるので、一度帰ったの。」

「そうか、母さん一人だったんだね。でも、意識が戻って良かったじゃないか。」


「ええ、でもね…颯ちゃん目が…見えてないの。」

「え?目が?どうして。」


「頭を打った時の衝撃でなったらしいんだけど、言葉も少し出にくいの。それはじきに治るけど、目は…駄目だって…。」

「そうか…目が…。母さん大丈夫?」


「母さんは大丈夫よ。でも、聡に迷惑かけてしまって…母さん、申し訳ないわ。」


「こっちは大丈夫だよ。おじいちゃんもおばあちゃんもいるからね。俺は、母さんが心配だよ。」


「聡、明日は帰るわ。颯ちゃんは、看護士さんがいるから。」


「母さん、わかったよ。こっちはなんとかやれる。やっぱり颯太の側にいてやりなよ。」

「ありがとう。どっちにしても一度帰らないと。」


「うん、わかったよ。気をつけてね。」


「ありがとう、聡。」


ありがとう聡。心の中で何度もそう繰り返した。
夏海は、颯太のいる病室へ戻った。

「颯ちゃん、何か飲みたい物ある?お医者さんが、飲み物なら飲んで良いって。」


「うん、僕は…、冷たい水が、飲みたい…。」


「わかったわ。じゃあ、お水買ってくるね。」


「ねえ…夏海、僕は、治る?この目は、治る?上手く、話せないし…。」

「颯ちゃん、治るわ…心配ないわ。会話も、暫くしたら元に戻るって。私とたくさん話して、リハビリになるから。笑。」

そう言いって、飲み物を買いに出た。颯ちゃん、ごめんなさい嘘ついて…。今は、言えない。



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