~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
礼文に戻った夏海は、その夜聡に話をした。


「聡、疲れてるのに悪いけど…、母さん大事な話があるの。」


「いいよ俺もさ、大事な話があるの。」


聡は、夏海のそばに来て座った。


「母さんの話を先に聞くよ。あいつ…いや、颯太の事だろ?」


「そうよ聡、颯ちゃんの目は、もう元に戻らないの。」


「一生見えないって事?」


「そうよ、母さんは、とても責任を感じているの。これから母さんは、颯ちゃんの目になりたいの。颯ちゃんのすべてを、受け入れてあげたいの。目だけではないの…左足も少し麻痺が残るって…。こんな大事になって、私だけ平穏に暮らすなんてできないの。」


「そうか…母さんはどうしたいの?」


「礼文で一緒に暮らしたいの…。もちろん、民宿は辞めない。今まで通り、聡と二人で頑張るわ。ただ、颯ちゃんは、手助けしてくれる人が必要なの…。それに…母さんは彼を愛しているの。」

「母さんが一緒にいる事が幸せと言うなら、それ以上は言わないよ。母さんが思うように、颯太にしてあげたらいいよ。」

「聡、心配ばかりかけてごめんね。」


「いいんだよ。俺今まで、母さんに甘えていられたもの。これからは自立しないとね。それでさ、俺の話は…んと…。ちょっと待ってて。」


そう言いうと、聡は客室へ入って行った。
そして、若い女性のお客を連れて来た。


「母さん、驚くと思うけど、この人は里村雪絵さん。俺の恋人。」


雪絵は、お辞儀をすると夏海の前に座った。


「俺、拓海の事で言いそびれてさ、コンビニでバイトしてた時に、知り合ったんだ。落ち着いたら、こっちへ呼ぼうと思っていたんだ。そしたら、颯太が入院してしまって。将来は…ていうかできれば今すぐにでも、結婚したいんだ。」


夏海は、びっくりした。聡にそんな人がいるのも、知らなかった。


「聡、でもそちらのご両親は?」

「あのさ…雪絵は両親がいないんだよ…。」


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