~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
「え?ご両親は、どうされたの?」

夏海は、聞き返した。
聡が話を続けた。

「雪絵は、小さい時に両親が亡くなって、親戚の家で育ったんだ。でも、居場所がなくて、高校もバイトしながら卒業して…就職して家を出た。だけど家賃払うのやっとで、コンビニで夜もバイトしてたの。それで、俺と知り合ったんだ。」


「私は、聡くんが呼んでくれたら、いつでも来るからって言ったんです。そしたら、もう限界だーっ!ていうから。笑。」

二人は、顔を見合わせて笑った。


「親戚の方は、心配してないの?」

夏海が聞くと、雪絵は急に暗い顔になった。


「私、もう帰る所はないんです。」

聡が話を続けた。

「母さん、あまり聞かないで。可哀相だろ。俺が、知ってればいいんだ。ね?雪絵。」


「聡も、そういう人がいたのね。びっくりした。事情はだいたいわかったわ。遠い北の果てまで来てくれて、本当に聡でいいの?笑。」


「もう、母さんてば、笑。そういう事で、雪絵は民宿を手伝ってくれるから。暫く病院に行ってても、心配ないよ。」


聡は、雪絵と楽しそうに話を続けた。
夏海は、明日の仕度をした。颯太は今夜、どう過ごしているだろうか。不安で、心が揺れていないかしら…。


一方、病院の颯太は眠れなかった。夜になると、病院は何の物音もしない。
僕は、本当に治るのだろうか。このままずっと、目が見えなかったら…。暗闇が不安で不安で、じっとしていられない。
颯太はたまらず、看護士を呼んだ。

「どうしましたか?」


看護士が来た。


「眠れないんです。あの…、静か過ぎて不安で…。」

「わかります。見えないと不安ですよね。何か持ってきますね。」


看護士はラジオを持って来た。


「ラジオを聞けば、少し気が紛れるでしょう。」


「ありがとう。」

看護士はラジオをつけた。颯太は、やっと横になった。暗い病室に、ラジオの音だけが響いていた。
颯太は、そのまま眠りについた。



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