~ジラソーレ・ひまわり~(礼文島から愛を込めて)
《あのね颯太、どうして放浪の旅に出たか、聞いてもいい?》


《ああ良いよ、もう時効だし…笑。
僕は勇気がなかったんだ。
大学の時、付き合った人がいたんだ。卒業して、故郷へ帰って、一緒に住む予定だった。就職も決まって、僕は毎日が、薔薇色だった。一足先に帰って段取りつけてさ、戻ったら、彼女はいなかった。自分の故郷へ、帰っていたんだ。
僕は彼女も、同じ思いだと思っていたんだ。僕は自分の事しか、考えてなかったんだ。
彼女は母子家庭で、お母さんを手助けしたかったって。僕にその事を言えなかった。
彼女の気持ち聞いてあげられなかった僕が悪いのさ。あまり上手く言えないけど、まあ…ザッとこんな感じ。笑。》

《そっか、それで放浪の旅に出たのね。やっぱり、悪い事聞いたかな?》


《ううん、いいんだよ、僕が悪いのさ。
それに振られたからって、不甲斐ない奴でしょ?
でも、あの時は本当に駄目だった。抜け殻だった。
就職も棒に振って、母さんに合わせる顔がなかった。
それで、小笠原の父島に逃げたんだ。毎日ぼーっとして、よっぽど僕が危なっかしくて、見ていられなかったんだろうね。そこの民宿の人が、優しくしてくれたんだ。色々話かけてくれた。
そのうち、いつまでも帰らない僕を心配して、働かないかって言ってくれて…。気付いたら、あっという間に一年間たっていたんだ。
いろんな人と出会って、話して、すっかり元気になった。》


《そう、元気になって良かったね。》


《うん、もう平気さ。今は良い思い出。あの民宿の皆には感謝してるし、今でも連絡してる。》


《そう、良かったね、良い出会いがあって。きっと、颯太の心が真直ぐだから、そういう出会いがあったんだと思うよ。》


《あはは、そうかな。僕は、そんなに良い人間じゃないよ。ふつーの人だから。あ、そうだ、バイト決まったんだ。農家の手伝いさ。》


《農家の手伝い?》


《ああ、農家の収穫の手伝いさ。詳しい事は、また連絡するね。》


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