Last note〜特性を持つ者へ
事務所に難波さんより先に戻ると、矢崎さんがしょんぼりした顔でパソコンと睨めっこしていた。

「青山くん、ごめんなさい。
私、ネットでも方向音痴みたいです…。
海沿いの倉庫って、ある意味色々ありすぎて…」

ネットでも方向音痴があるのかと疑問に思ったが、俺は矢崎さんにフォローをいれた。

「あの掲示板を見つけてくれたんだ。
よくやってくれたよ、ありがとうね。」

そう言うと、少し苦笑いしてお茶をすすった。

そこで難波さんと比嘉特捜部長が事務所に入ってきた。

「青山くん、柊木憂莉が誘拐された話は難波くんから聞いたよ。場所の特定が難しいようだね。」

比嘉特捜部長は渋い顔をしていた。

「柊木日芽と話してきます。」

俺はそう言ったが、引き留められた。

「ワシが話してきたよ。誘拐の件もね。
彼女も場所の検討はないようだが、もしかしたらテレパシーで分かるかもと言って、今試みてくれているよ。」

もはや現状、特性でしか事を進めれていない気がして、なんだか歯痒い。
難波さんも悔しそうな顔をしている。

後少し、何か見つけなければ、
柊木憂莉の命が危ない気がする。

誘拐されたのは、恐らく昨夜だろう。

何らかの情報を得た柊木憂莉はあのBarへ行った。
だが、そこで美作あきらと鉢合わせたのか、怪我を負わされた挙句に誘拐された…。

何故、その時に犯行に及ばなかったのか?

何故、誘拐を選んだのか?

「…矢崎さん、"Breath"の影の処分の方法って分かりますか?」

矢崎さんはそれを聞いて、何か思い出したようにパソコンのキーボードを叩き始めた。
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