俺のものになってよ
「…藤井さん」
その瞳に苦し気なあたしが映る。
あぁ、久しぶりに名前呼ばれた。
ちゃんと見てくれた。
それだけで泣きそうになる。
でも、絶対泣いてなんかやらない。
ぐっと口を噤む。
ちゃんと言わなきゃ…
「青木くん、あたしっ…」
風があたしの髪を揺らして、目にかかる。
でもそんなの気にもしないで、ただ真っ直ぐに彼を見つめた。
「青木くんのことが…っ、す「────湊っ!」
すき…、そう言いかけた時。
あたしの声に重なるように、別の声が聞こえた。
視界の端に、ふわっと目の前に綺麗な栗色の髪がなびくのが見える。