俺のものになってよ
その人は────ばっと、青木くんに抱きつくと彼を見上げて微笑む。
まるで、あたしなんか見えてないみたいに。
「会いたかったよ、湊」
「由梨…なんでっ…」
大きく目を見開くと、その瞳が微かに揺れる。
由梨…、青木くんの口から出た彼女の名前であろう言葉に胸がチクリと痛む。
呼び捨てなんだ…彼女の事は。
傍から見たら、まるで2人の方がカップルであたしが場違いな気がして
「っ…」
「藤井さん…っ!」
青木くんの声が聞こえたけど、振り切って思いっきり走り出す。
見たくない。あんなのっ…
「…っう…すき…っだよ、」
頬をつうっと雫が伝う。
風が冷たく頬を掠める。
伝えるはずだった2文字は、涙と一緒にこぼれ落ちた。