俺のものになってよ
「…そっか、湊はもう、ちゃんと前に進めてるんだね」
「…あぁ」
由梨さんはちらりとあたしに視線を向けると、ふっと笑を零した。
「いいんじゃない?その子、度胸も根性もあるし…お似合いだと思う」
そう言ってクスッと笑うと、彼女は今度こそ背を向けて歩き出した。
数歩歩いたところで、彼女はゆっくりと足を止めた。
「じゃあね、湊。それから、────…ありがとう」
振り返らないでそう言うと、また彼女は歩き出した。
顔は見えないから、どんな表情で言ったのかは分からない。
でも、多分泣いてた。
その肩が、小さく揺れているのに気づいたから。
これからは、もう同じ間違いはしないでしょ?
だから、ちゃんと後悔しながら幸せになってほしい。
そんなことを思いながら、その背中が見えなくなるまで見つめていた。