俺のものになってよ
王子の秘密
「えっ、藤井さんが…?」
目の前の彼女が信じられない、とでも言うように呟いた。
いや、あたしの方が信じられない。
ていうか、あたしの名前知ってたんだ。
「そう、彼女が俺の恋人」
彼女の質問に答えるように、王子がそう言う。
そしてあたしの肩に回していた腕を少し引き寄せ、ふわりと花が舞うように微笑んだ。
この人、俳優になれるんじゃないかな。
堂々と嘘をつく彼にそんなことを思った。
「ほんとなの?藤井さん…」
青木くんに告白していた彼女は、あたしの視線を移し真っ直ぐに見つめてそう言った。
あまりにも真っ直ぐすぎる眼差しを向けられ、思わず目を逸らしたくなる。
「…う、うん。ほんと、だよ…」
ぎこちなくそう返す。
完全なる嘘。
でも今はそう話を合わせる他なかった。
「そっか、知らなかった…。青木くんはほんとに藤井さんのことが好きなんだよね?」
今度は隣の彼にそう問いかける。
「うん、好きだよ」
彼は迷うことなくはっきりとそう言った。