俺のものになってよ
普段の彼は、誰にでも愛想が良くていつもにこにこ笑顔を振りまいていた。
どこをとっても完璧で、誰でも憧れてしまうような。
でも、今あたしの目の前にいる彼は少々性格は悪いようだけど、貼り付けたような笑みはなくなんだか新鮮な気がした。
「んー、意外とこっちの王子様も悪くないかもね」
そう言ってへらりと笑えば、彼の瞳が微かに見開かれる。
「…は?本気で言ってる?」
「え、うん。だってなんか、今までの青木くんは完璧すぎて別世界の人って感じがしたから…」
『────完璧すぎてちょっと怖いかも』
『────同じ人間とは思えないよね』
完璧すぎて、あたしとは程遠い。
ずっと、そう思っていた。
でもそれは、本当の姿を隠すためにつけた仮面。
これが、本当の青木くんなんだよね。
ちらりと彼を見上げる。
「…やっぱり、ちょっと変わってるね。あんた…」
少し空いた窓の隙間から風が吹いて、ブラウンの綺麗な髪がなびく。最初よりも柔らかい口調でそう言うと、目を細めて口角をゆるりと上げてあたしを見つめた。
────ドキリ
また始めてみるその表情に、心臓が少し音を立てた。