俺のものになってよ
「そんなこと言って、満更でもなかったくせに〜」
「おい和哉、お前は黙っとけ」
悪態をつく湊だけど、その頬が少し赤く見えるのはあたしの気のせい?
「ほんと、危なっかしくてほっとけない」
グイッと腕をひかれて、あっけなくその胸におさまる。
あの甘い香りが広がって、すごくすごく安心した。
「先輩、俺のこと好きになってくれたのは素直に嬉しいよ」
湊の声が、耳に響く。
「けど、この人になんかしたら、そんときは俺相手が誰だろうとマジで許さないから」
「…っ」
「行くよ」
そのまま腕を引かれて、この場を離れようとする湊にあたしは歩くスピードを落とす。
「芽依?」
あたしは後ろを振り返り、まだよく状況の飲み込めてない先輩を見つめた。
「遥先輩、あたしはやっぱり湊が好きです。だから、先輩には譲れない」
「……」
「でも、こんなふうに真っ正面からぶつかってきてくれたのは、先輩が初めてだったから。ちょっとだけ…ほんとちょっとだけ嬉しかったです」
「…っ、」
「それじゃまた、遥先輩」
先輩の瞳が少しだけ揺れた気がして、あたしは少しだけ微笑んで背を向けた。
そしてまた歩きだそうとしたところで、遥先輩に呼び止められる。
「待って、芽依ちゃん!」