俺のものになってよ
「…ふふっ」
「ちょっと、何笑ってんの」
ぱっと手が離されて、視界が鮮やかな色を取り戻した時にはもう、いつもの三橋くんに戻っていた。
あーあ、せっかく可愛かったのに…
「何その顔」
「…別に?さっきはあんなに可愛かったのにって思っただけ」
なんて冗談交じりにそんなことを言えば
「俺はさっきの“好きっ”て必死に言ってる遥先輩の方がよっぽど可愛いと思うけど?」
「…っ!?」
やられた。
どうやら、彼の方が一枚上手らしい。
「ねぇ、遥先輩」
「なに?」
「俺と…
付き合ってください」
ふわりと綺麗な髪が風とともに揺れて、あたしの心ごと奪う。
こんなあたしを好きだと言ってくれる人がいるなんて、もう奇跡みたいなものかもしれない。
「…しょーがないから、付き合ってあげる」
こんなに可愛くないあたしを、素直じゃないあたしを、どうか見破って。
そんなあたしを見てわかり切ったようにふっと笑を零した彼は
「やっぱ可愛くねぇ」
なんて言ったあと、そっと身を屈めた。
ミルクティー色の綺麗な髪が視界の端に映って、優しい体温が重なった。
Fin.