繋いだ指が示す未来


「なにそれ!

立花超かわいい」

「え、は」

矢倉の唐突な言葉に
不覚にも顔が熱くなった。


「なんでそんな必殺技隠してたの!

本当に小悪魔だな」

私の頭をぐしゃぐしゃ撫でた。


「あー!やめて、やめて!

それ、私なら許されるけど
他の女子にはしない方がいいよ」

「あ、ごめん」

矢倉はすぐに手を止める。

私は手ぐしで髪を整えてから

嫌味をこめて
外面の笑顔を向けた。


それにも関わらず
次に矢倉は優しく頭を撫でた。

「俺、立花と仲良くなれて嬉しい。
素を出してくれてありがとう」

矢倉の優しい笑顔に
胸が鳴った気がした。


矢倉の方が小悪魔じゃん。


私は
「こちらこそ」
と素っ気なく返した。


正直今まで人と関わるのはやめようと思っていた。
人と深く関わることで不幸になるのが怖かった。


でも矢倉といる時は
そんな不安さえ忘れてしまう。

私は確信した。


宇佐のときはあんなに嫌だった
パーソナルスペース侵入でさえ
矢倉は許された。

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