繋いだ指が示す未来
音量を調節する各種スイッチと
メインパネル下にある
楽器左側の音色スイッチに対応した
色つきのスイッチを確認すると
OFFになっていたから
しっかりとONにしていく。
もう一度指を鍵盤にのせた。
すると音はきちんと出た。
でも1つだけ壊れている鍵盤があって
そこだけ音が鳴らないが
そんなの関係なく
私は中学の頃に作曲した曲を
弾き始めた。
弾き終えると
誰も来ないはずの
その教室の戸を
ノックする音が聞こえた。
「はい」
と返事をした。
先生に見つかったのかと
少し見構えたが
教室の扉を開けたのは
矢倉だった。
「演奏中にごめんね」
なんだ。見られていたのか。
「いいよ、気にしないで」
私は椅子に座ってお弁当を開けた。