繋いだ指が示す未来
「正解だよ。
この曲はすごく性格の悪い曲」
全体的に立花凛自身を表した曲。
長調のメロディーが大半を占める曲だが
わずかに短調に転調する箇所がある。
その箇所にこそ
“立花凛”がいる。
他は全て仮面の姿。
どこにもいない私を表す
空虚なメロディー。
あってもなくても同じ。
だけどその長い冗長で
ありきたりなメロディーが
あるからこそ
転調箇所の旋律が際立つ。
私はまたエレクトーンに
指を置いた。
私はさっき弾いたのとは
全く真逆に弾き始める。
長調パートに感情を込めて弾き
短調パートをいたって平坦に弾いた。
とてもとても平坦に。
だから転調があったことに気づかないほどに
それは平凡でつまらない曲だった。