繋いだ指が示す未来
1章
スタンス
高1の2学期に入ってすぐ
矢倉碧(やぐらあお)という男が
ふらりと1年3組へやってきた。
転校生というわけではない。
もともとこの学校の生徒だが
一学期はずっと学校を休んでいたのだ。
クラスには妙な連帯感が生まれていて
半年近くブランクのある人間には
さぞかし立ち入りづらかろうと
周囲も微妙に気を遣っていたのだが
彼はそんな気遣いが
ばかばかしくなるくらい
あっという間にクラスに溶け込んだ。
それはもう、見事に。
私には
___誰にも言いはしなかったが
高校浪人という引け目があり
彼と比するなら
そんなものは言い訳にもならなかった。
そして
彼の人間関係を構築する
そのスピードは
何色にも染まる
“白”っぽさがあった。