繋いだ指が示す未来
「立花」
「え?矢倉」
1人になるために出たのに
矢倉に見つかって
少し残念な気がした。
「トイレあっちだけど」
私はトイレの方向を指すと
矢倉はそんなのおかまいなしに
私の隣に座った。
「ねぇ、立花。
なんでカラオケ提案したくせに
1曲も歌わないの?」
「え?」
もしかして
歌を歌うように説得しに来たのか。
「私、絶対音感持ってるから
歌ってる時少しでも音を外すと
気になっちゃうんだよね」
だから
さらさら歌を歌う気はない。
私は小さく
ごめん、と謝った。
「そうなんだ」
矢倉は納得したように呟いた。
私は沈黙の訪れを予想して立ち上がる。
「じゃあ、みんなのところに戻ろっか」