瞳に太陽、胸に星 ~誤解から俺様アイドルに付きまとわれてます(困)~


谷宿の朝は、意外と早い。
夜が遅いのに、早い。

ひとたび建物の中に入ってしまえば朝か夜かの区別なんてないけれど、朝の十一時からお店を開けるために、アトリエ仕事は六時から始まる。

よって、あたしは始発でここに来る。

「ちとせちゃん、最近キュウリちょっと薄過ぎよ。限界チャレンジじゃないんだから、これじゃぁシフォンだわ。せめてタフタぐらいでお願いね」
「あはは、スミマセン、ついやってみたくなっちゃって」

キノコさんの朝は、スライスキュウリのサンドウィッチで始まる。

キュウリがポリポリしないように薄くスライスするのがポイントなのだけど、スライサーじゃなくて自分で同じ厚さを意識して切ると、仕事でも目利きになってくるのだそう。

確かに毎日スライスしていると一ミリがとても大きく感じるようになってきたかもしれない。

ここで服飾の勉強をさせてもらっているあたしは、授業料として食事と洗濯、掃除をしているのだ。
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