もういいかい?
「お待たせ。」

テーブルに並べられたのは…………

お世辞にも『美味しそう』と言えない代物。

焦げて形の崩れた玉子焼きに、爆発した冷凍コロッケ。

不揃いに切られたサラダ。

「プッ。」

「笑うなら食べるな!」

プゥと膨れる頬が可愛い。

「まだ材料があるなら、何か作りますよ。」

僕の言葉に、膨れていた頬は元に戻り

「ホント?」と、聞いてくる。

特別上手い訳ではないけど…………

たぶん海晴先生よりは出来るかな?

一応ずっと独り暮しだったから。

冷蔵庫を見せてもらうと…………

冷凍うどんとネギとニンジン、後は鶏肉。

調味料もあまりないから………

醤油ベースの焼きうどんにすることにした。

レンジで解凍して、野菜とお肉を炒めて

だしと醤油で味つけをして、最後にバターを少し入れて

風味とコクを出した。

わずか10分の料理に

「スゴい!!」と大絶賛。

テーブルに運んで、海晴先生の料理と僕の作った焼きうどんを

食べ始めた。

「………………………………ごめん。」

お座りさせられたイヌのように

しゅんとして、俯いている。

「どうしました?」

可愛いくて、このままぎゅっと抱きしめたくなる衝動を

何とか理性で押さえて聞いてみた。

「航が疲れてるから……ご飯でもって思ったのに……………
結局、作らせてしまった………………。」

普段強気なお姉さまなのに、これは……………

このギャップは、本当に可愛すぎる。

か弱い女の子にしか見えない彼女は、この真っ白なお部屋にこそ

ピッタリだと思う。

僕以外、誰も見てない事に感謝したい。

「僕は今………楽しくて、疲れてるなんて忘れてました。
好きな女の子と一緒に作って食べれるなんて、最高なご褒美ですよ。」

あっ!コクっちゃった。

まぁ、いいかぁ!

どうせ近い内に言うつもりだったんだから。

固まる彼女に

「さぁ、食べましょう!」と促した。
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