シャンパンを飲む猫1

「レイは凄く美人でいい子だけど、今の彼女と別れる気はないんだ。ごめんね」シックなラブホテルの部屋に小さく呟くような声で先輩が言った。
またか。
期待のワクワクやドキドキが一気に冷めていく感覚で凍え死んでしまいそう。大学に入学してからこれで3回目。
「そうですか、、、。また、写真撮りにどこか連れて行ってくださいね！」精一杯の笑顔。引きつってないかな、、、。「うん！連れてく！」そんな私をよそに無邪気な笑顔を向ける先輩はやっぱりステキだったけど、なんて残酷な人なのだろう。

こんな優しい言葉かけられたら、諦めがつかないじゃない、、、。

レイは大学二年生。元彼は少ない。しかし浮気相手になら既に2回なっている。
レイは昔から思っていることを直ぐに言う女の子で、行動も早い。好きだと思った人には後先考えずに直ぐに告白するような肉食系女子。ここまでくると生まれてくる性別を間違えてきたレベルだ。振られることも勿論あるが、現代っ子にはない愛嬌とそこそこ美人なおかげでまあまあモテていた。しかし、レイは好きだと思った人としか付き合おうとはせず、告白されても振ってばかり。付き合った彼氏は全員、レイから告白して付き合うことになった人ばかりなのだ。猪突猛進を具現化したような彼女はその上惚れやすく諦めが悪い。片想いの相手に恋人がいてもお構い無し。それどころか、持ち前の行動力を武器に略奪を図ろうとする始末。しかも計画がえげつない。片想いの恋人の友人関係を把握し、情報を集め、仲間を作って浮気をばらすという作戦を企てて実行した。まあ、結果は失敗に終わったが、、、。レイは良く言えば一途で行動派。悪く言えば悪女気質のある女の子なのである。
そんな彼女は今回もまた、彼女持ちの年上の先輩を略奪することに失敗したのであった。

ヤることやって、またダメなんて。これで3回目よ。


車の中で、泣きそうになりながら私は心の中で呟いた。


私のこと、好きになってくれる人はいるのかな。
愛しても愛してくれない。
身体の関係は持てても恋人の関係にはなれない。
可愛い、キレイと言ってくれても好きとは言ってくれない。
モヤモヤする。
チクチクする。
虚しい。
悲しい。
とても、とても、寂しい。


「剛先輩、どうだった？」
大学の友達のアンが心配そうに聞いてきた。
朝の地下鉄。朝帰りの私が沈んだ顔でいることに心配してくれてる。心配してくれてることに感謝するべきなのかもしれないけど、今の私にはなんとなく察してるのに聞いてくる彼女にイライラした。

私って本当に悪い子。