許せない青空
許せない青空
診察室で医師と向かい合いイスに腰かけて……。医師はなかなか口を開かない。
それだけで私に残された時間はとても短いものだと悟ってしまった。
私は三十一歳、独身。両親も既に他界し姉妹もいない。仲の良かった両親にとって私は四十代にして、やっと授かった子供。両親共に所謂一人っ子で私には、おじ、おば、従姉妹すらいない。天涯孤独っていうことだ。
それでも私の人生の残り時間が長くないと知って、何かやり残していることがなかったのか、大きな忘れ物があったんじゃないのか、頭の中を隅から隅までぐるぐる探していた。
医師は「落ち着いて聞いてください。肺ガンです。既に骨にも転移していて放射線と薬で治療をしていこうと思っています」
「それで治る見込みはあるんですか?」
「完治は難しいかもしれませんが、少しでも長く元気でいていただきたいのです」
「いえ。完治の見込みがないのでしたら放射線も薬も拒否させていただきます」
「でも……。それでは……」
「悲しむ家族もおりませんし、最後まで自分らしく生きて終わりたいと思います」
「本当にそれでいいのですね。気が変わったら、いつでも来院してください。それと月に一度は受診するように」
「分かりました。ありがとうございました」
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