監禁生活5年目
決心
……………監視カメラ?
私はぐるりと部屋を見渡す。
考えたことなかった。
私はマンガをもう一度見る。
主人公の男の子は監視カメラでずっと見られていたんだ。
「……どうしよう…どこに……」
この日、私はずっと監視カメラを探し回った。
ベッドの下。冷蔵庫の上。ソファーの隙間など。
けれど見つけることは出来なかった。
『………ただいま、………………………花菜?』
『お母さん…………おかえりなさい…』
『どうしたの?暗い顔して………何かあったの?』
『………別に』
『?花菜…………………!!どうしたの!?その顔!?…』
『……うぅっお母さんっ!』
『……何があったの?なんでそんなに痣が…』
『………男の子達がね、「いっつもおんなじ服来てるっ!貧乏じゃん!」って言ってね、私のワンピースを絵の具で汚してきたの。それで………』
『!!……………』
『それで…「やめて!」って何回も言ったんだけど止めてくれなくてね、そしたら私の爪が男の子を引っ掻いちゃってそれで………』
『………殴られたの?』
『…………うん』
『……………………そっ……か…。………ごめんね…花菜ごめんね…』
『お母さん?どうしてお母さんが謝るの?お母さんはなんにも悪くないでしょ?』
『ごめんね…花菜。お洋服も、おもちゃも………好きなもの買ってあげられなくて………ごめんねぇ』
『………お母さん……泣かないで…』
『……ごめんね』
「…おはよう」
「お早うございます…」
「…マンガ読んだ?」
「はい…」
「…そう。ここにご飯置いておくからね…」
『ガチャン』
ごめんなさい、お母さん。
またお母さんの夢を見た。
あれは、男の子にいじめられてワンピースを絵の具まみれにされた。
ワンピースは結局所々絵の具がついていて落ちなかった。
お母さんは何度も泣きながら私に謝っていた。
「……ご飯食べよう…………」
私はご飯にてを伸ばした。
「………唐揚げにしよう」
私は唐揚げを口に運んだ。
「…美味しい」
おにぎりがあるのでそれも食べようとした。
そして気づいた。
「…あ…れ?」
そういえばあいつ。
服を着てみた?とか漫画読んだ?とか聞いてきたよね?
監視カメラをみていれば聞かなくてもわかるはず。
聞いてきたってことは…………………………………………………
…………監視カメラはない?
「…………でも」
なんでないの?
私はてっきりどこかにはあると思ってた。
もし私が誘拐犯なら絶対につけている。
あのマンガの男の子みたいに逃げられたりしたら困るから。
「…………もし、監視カメラがないなら…」
いける。
ここから脱出できる。
けれど1番難しいのは…
私は唯一外に出れるドアを見た。
あいつがいつも朝このドアを開けて入ってくる。
「………鍵をあいつはいつもかけてるよね」
私はそっとドアノブに手を置いた。
「…ここを開けれれば…………お母さんに………」
ここから出れれば……………会える。
私はマンガを全部読んだ。
前みたいに脱出に使えることが描かれてるかも知れないから。
けれどなかった。9冊読んでみても良いことは描かれてなかった。
「……あとはこれだけ…」
私がずっと避けて読んでいなかった本。
血だらけの女の人が表紙にいるから。
怖くてあんまり見ようとしなかった。
私は勇気を振り絞ってマンガを開いた。
「……………あ……………………そっか…」
心の何かがストンと落ちてスッキリする。
「………壊したら………もう動かなくなるのか……」
ここに来て、初めてに近い心のそこからの笑みがこぼれる。
もうすぐです、お母さん。