お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~


「失礼、いたします……」


直接話すのは、考えてみれば初めてのこと。

現社長の御子息――成瀬潤希(なるせみつき)副社長は、聞いた噂では年齢は三十歳ほど。

頭脳明晰な優秀な方で、もちろん薬剤師免許も取得していると伺う。

現社長の右腕となって会社を発展させている、若き次期代表取締役だ。

しかし、副社長で素晴らしい学歴を持っていたからというだけでは、きっとこんなに緊張しない。

彼を前にして視線が定まらなくなってしまうのは、その容姿が物凄く端麗だからだ。

私の入社当時、副社長は海外へ長期出張に出ていた。

その後、帰国するとしばらく関西支社を取り仕切っていて、東京の本社には去年本格的に籍を置くようになった。

そうなってからも、普段、部署的にも仕事で関わることはなく、たまに遠目から見かける程度。

もちろん、こんなに近くで対面するのは初めてのことだ。

高まる緊張に加えて、心臓まで主張するように音を立て始める。

成瀬副社長は女子社員の憧れの存在で、姿を現せばざわめきがわき起こる。

目を引く高身長はモデルのような八頭身。

いつでも抜かりないスーツの着こなしと、遠くからもわかる艶のある綺麗な黒髪。

それだけでも十分素敵なのだけど、雰囲気だけで終わらないのが成瀬副社長。

顔面も見事に整っているものだから完璧と囁かれるのだ。

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