お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
「ああ、ごめん……いや、ゴキブリを虫取り網で取ろうとしてる人、初めて見たから」
「え、あの、でも、その」
困る私をよそに、成瀬副社長はまだ笑いを燻らせている。
そして、床に置いた殺虫剤を運んできたカゴから、害虫用冷凍スプレーを手に取った。
「でも、高さがあるから網はちょうど良かったかもな」
そう言うと「いいかな?」と私の手から虫取り網を取ってしまう。
「あのっ」
「下がってて」
「え、でも……」
戸惑っているうちに、成瀬副社長はあっさりと壁のゴキブリを網で仕留めてしまう。
私が立ち尽くしているうち、網を引き寄せ、上から冷凍スプレーを吹きかけた。
凍らされたゴキブリは、ぽとりと網の中へと落ちて入る。
柄を捻って網の口を塞ぎ、成瀬副社長は手早くスプレーと一緒にカゴに入れて持ってきたビニール袋を手に取った。
「あっ、広げます!」
慌てて成瀬副社長の手からビニールを受け取り、手早く広げる。
「ありがとう」
大きく開いた口に網を丁寧に入れ、仕留めたゴキブリを中に閉じ込めた。