お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
「よし、完了」
やっぱり直視できなくて、袋を手にしながらも視線を外していると、そのうちに成瀬副社長がビニールの口を縛ってくれていた。
「す、すみませんでした、私がやるべき仕事なのに、副社長にこんなことやらせてしまって……本当に、申し訳ありませんでした」
「女性にやらせることじゃないと思ったから手を出しただけだから、気にしなくていいよ」
「そんなこと……」
あのルックスで、女性には紳士的だと、噂は耳にしていた。
接したら絶対にハートを撃ち抜かれるとまで言っている女子社員もいるほど。
でも、今ならその意味がわかってしまう。
副社長ともなれば、私がゴキブリ退治をしている間も、奥で席に掛けてふんぞり返っていてもいい身分の方だ。
それなのに、総務の雑務、こんな、Gの処理を買って出てくださるなんて……。
「使ったこの網、普通の虫を捕ったわけじゃないから、破棄してもいいと思うよ。彼らはあらゆる菌を持っているからね」
爽やかな笑顔を見せ、成瀬副社長は虫取り網を入り口のドア横の壁に立て掛ける。
「あ、は、はい、わかりました」
「でも、初めてだな、ここにゴキブリが出るなんて」
そう言われて、「あっ……」と思わず声が漏れていた。