お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
お見合いのススメ
帰宅ラッシュの電車に揺られながら、私はぽけーっと退社前のことを思い返していた。
初めて近距離でその姿を見たこと、物腰柔らかな、余裕のある紳士な態度。
噂には聞いていたけれど、実際に身を持って体験する成瀬副社長の素敵さは、想像の範疇を超えていた。
恥ずかしい気持ちはもちろん、私なんかが見てしまって申し訳ないというか、とにかく目を合わせることがなかなかできなかった。
でも、ほんとに素敵だったな……。
思い出すと、ついぼんやりとしてしまう。
夢見心地というか、成瀬副社長の存在自体架空の存在のような感覚に陥っていた。
「ただいまー」
新宿から中央線で約三十分。
二十三区から少し外れた国立市に私の実家はある。
駅から大学通りを歩き、一橋大学の裏手にある住宅街に一戸建ての住まいを持つ。
玄関を入ると、見慣れない女性ものの白いパンプスが揃えて置いてあった。
「あっ、里咲、お帰りなさい。待ってたのよ!」