お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
そもそも、こうしてまた個人的に話をする機会があるとすら思わなかった。
動揺して「え、えと」と、無駄にごしごし手を拭き続けてしまう。
そんな私の様子を、成瀬副社長は綺麗な顔に微笑を浮かべて眺めている。
「……て、急に誘っても厳しいかな。お弁当、持ってきてるとか」
「あ……は、はい、そんな、ところで……」
私の返事に、成瀬副社長は「そっか」と爽やかな笑みを浮かべた。
「それは残念。でもまぁ、チャンスはこれからいくらでもあるか……」
終始落ち着けない私をよそに、成瀬副社長は最後まで余裕たっぷりに微笑みかけてくる。
そして「仕事中に悪かったね」と、あっという間に給湯室から立ち去っていってしまった。
う……うそ……。
一人になってから、脱力してその場に座り込みそうだった。
シンクの縁に手を置いて、崩れ落ちるのをなんとか阻止する。
成瀬副社長が、あの成瀬副社長が、わざわざ戻ってきて私なんかに声をかけてきてくださった。
しかも、ランチに誘っていただくという信じられない展開。
パニックになりそうで言葉も出なかった私に、成瀬副社長が気を使って『お弁当、持ってきてるとか』と言ってくれ、咄嗟に〝そういうこと〟にしてしまった。