お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
少し落ち着きを取り戻してから、お弁当を持ってきているということにしてしまった自分を恨む。
きっと普通の女子なら、多少の緊張があっても、成瀬副社長からお声をかけていただいたならご一緒させていただく選択をするはず。
ハァ……私は、とことん意気地なしだ。
成瀬副社長は何の気なしに、今日のランチのお供にタイミングのちょうど良かった私いう一社員に声をかけてくれただけだ。
それを、こうしてお弁当持参アピールをしてお断りすれば、次はもうないだろうと思う。
そもそも、話しかけていただく機会もきっともうないのに……。
「でも……これで良かった、のか……」
一人きりの給湯室に、ため息混じりの自分の声が落ちる。
後悔に苛まれながらも、もし今頃、成瀬副社長とお昼を共にしていたら、きっと何も喉を通らなかっただろうと、そんな自分が想像できた。
話すこともままならないのに、あの成瀬副社長の前で口を開けて食事を取るなんて絶対に無理だったに違いない。
ご一緒させていただかなかった選択は、身の丈にあった選択だったと思い直し、私は給湯室をあとにした。