お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~


一夜を共にしたと言っても、もちろん一線を超えることはなかった。

潤希さんはあの時の言葉通り、私を腕に抱いて一晩を過ごした。

時折、髪を撫でられたり、額にキスを落とされたりはしたけれど、それ以上のことに発展していくことはなかった。

はっきりと言葉にはしなかったけど、たぶん、潤希さんは私自身が経験が乏しいということを、あの時に察してくれたのだと思う。

だから、真っ赤になって、あからさまに動揺して、そんな状態の私を前に『悪戯がすぎたかな』なんて言ったのだと思う。

あの夜のあとの先週末から、潤希さんは海外出張でマレーシアへと出向いている。

この週末には帰国すると聞いているけど、そんな事情で約一週間ほど会っていないのだ。


「ではでは、乾杯!」


部長の音頭で、みんなが仕事後の一杯を口に運ぶ。

周囲に合わせて生中を注文していた私も、凍らされて少し白くなった冷たいジョッキに口をつけた。

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