お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
見られていたなんて全く気付かなかった。
どんだけ水やりに必死なのって思われてる⁈
「社内の植物が枯れないのは、須藤さんの細やかなケアのお陰だっていつも思ってるよ」
「いえ、そんなことないです!」
恐れ多い言葉に、首を横にぶんぶんと振る。
いつも通りの〝紳士で穏やかな副社長〟の潤希さん。
その姿にホッとしながらも、先日の夜の出来事を思い出してしまう。
甘く、意地悪なあんな姿を前にしてしまうなんて、今になって回想しても身体が熱くなり動悸がしてくる。
出張から戻ったあの日、潤希さんは呼び出されてマンションを出ていった。
それから休む間もなく元いた関西支社に飛び、東京には昨日帰ってきたのだ。
多忙を極めている潤希さんとこうしてちゃんと会ったのは、あの日の夜ぶりになる。
「仕事中にプライベートな話をして申し訳ないけど、今晩、時間取れるかな?」
「今晩、ですか。はい、大丈夫です」
「じゃあ、俺に時間もらえる?」
約束を取り付ける窺うような表情に、勝手に胸がきゅんと高鳴る。
「わかりました」
潤希さんはふわりと微笑んで、「それじゃ、今晩また」とその場を離れていく。
ジョーロを手にぺこりと頭を下げると、うっかり床に水をこぼしてしまった。