お見合い結婚いたします!~旦那様は極上御曹司~
思わず見てしまうのもわかる。
都会のオフィスビルのエレベーターに、虫取り網を手に乗ってきたのだ。
一体何事だって、私だったら確実に見ていると思う。
受けた好奇な視線に恥ずかしさを感じながら、じっと人が減っていくのを俯き加減で待つ。
各部署がある十階までに乗り合わせていたほとんどが降りていき、「ふぅ」と小さく息を吐き出した。
そうこうしているうち、目的階の十四階へと到着する。
会議室や応接室、重役の部屋があるビルの上層階は、他のフロアとは違う深みのあるグレーの絨毯が敷かれ、柔らかく足元を受け止める。
フロアの壁もドアも仕様が違い、全体的に落ち着いた雰囲気だ。
エレベーターを降りて副社長室へと向かっていく途中、奥から「ありがとうございます」と小走りで女性が一人やってきた。
さっき内線をしてきた秘書課の女性だ。
「すみません、よろしくお願いします。何かありましたら秘書課にお知らせください」
「あ、は、はい……」